平成22年度の税制改正法案が3月24日に成立いたしました。 今回の税制改正は自民党から民主党に政権が移って初めての改正にあたります。 政権交代から数カ月で取りまとめたものであるため、本格的な税制改革の方向性は来年23年度以降に向けて示されることになっております。 そこで税制改正の重要な部分をピックアップしてお伝えします。
1.扶養控除の見直し 「所得控除から手当へ」の観点から、子ども手当の創設とあいまって、年少扶養親族に対する扶養控除を廃止します。
① 年少扶養親族(16歳未満の扶養親族)については38万円の扶養控除を廃止 →所得税は平成23年度から、住民税は平成24年度から変更になります。 ② 子ども手当として22年度は月額13,000円が支給、 23年度は月額26,000円支給予定です。 ③ 特定扶養親族のうち16歳以上19歳未満までの特定扶養親族に対してあった 扶養控除の上乗分25万円が高校の実質無料化に伴い廃止されます。
⇒子ども手当や高等学校等就学支援金(私立高校に通学する生徒に対して支給)は、 昨年の「定額給付金」と同様に非課税の措置がされます。
2.非課税口座内の少額上場株式等の配当・譲渡所得等の非課税措置の創設 小口の継続的長期投資を促進するために作られる制度で、個人が一定の非課税口座(一定の証券会社などで開設)において、その口座開設時から10年以内に生じる上場株式の配当及び譲渡益については所得税と住民税を非課税にする措置が創設されます。
・非課税口座を平成24年~26年の3年間に年間に一人1口座開設できる。 ・年間1口座につき新規投資額で100万円を上限(翌年繰越不可) ・最大3口座まで開設でき・1口座につき最長で10年間保管できます。
⇒上場株式の税率が現在の10%から原則である20%に戻る平成24年から導入されます。
3.生命保険料控除の改組 生命保険料控除について、新たに介護保険料控除を追加し、合計で最大12万円が控除額となります。
平成24年1月1日以後締結の新契約について新たに介護保険料控除を設け、【一般】【介護医療】【個人年金】の3本となりそれぞれ4万円、合計で12万円が限度額になります。 (新契約と旧契約の両方について控除を受ける場合は4万円が限度となります。)
⇒会社側の対応としては平成24年度からの年末調整から変更になります。
1年前の平成21年税制改正では、当時の麻生内閣でリーマンショック直後という状況下のもと、本来ならば緩やかに増税へとシフトする予定であったものが急遽減税措置の継続と新たな減税対策が取られました。例えば、中小企業の軽減税率が2年間の時限的に22%から18%にされたり、欠損金の繰戻還付が恒久的に復活するなどの対策がされました。そのため、その減税措置が継続中である平成22年改正については、法人については特に新たな追加的な減税の変更はありません。しかし、グループ内の法人間の取引等について大きな変更がありご説明いたします。
1.グループ法人課税制度 一定資産(簿価1000万円以上の棚卸資産以外の資産)を100%グループ内の法人間で移転を行ったことにより生ずる譲渡損益の計上は、その資産がグループ外に移転等する時まで計上を繰り延べるようになります。
譲渡損益を繰り延べた場合には、その資産を譲り受けた法人における処分の状況を譲渡した法人も管理し続ける必要があります。
⇒平成22年10月1日以後の取引より強制適用されます。
2.大法人の100%子法人に対する中小企業向けの特例の適用制限 大法人(資本金5億円以上)の100%子法人については、次の中小企業向けの特例措置については適用されません。
・軽減税率 ・特定同族会社の特別税率の不適用 ・貸倒引当金の法定繰入率 ・交際費の損金不算入制度における定額控除制度 ・欠損金の繰戻還付制度
⇒平成22年4月1月以後の開始事業年度より適用されます。
3.特殊支配同族会社の業務主宰役員給与に対する損金不算入制度 (いわゆる一人オーナー会社課税制度)の廃止
⇒平成22年4月1日以後終了事業年度から廃止になります。 ただし、23年度改正で二重課税問題を解消するための抜本的対策を講じる予定です。
1.住宅資金贈与の拡充 (時限的な大幅拡充) 贈与税の住宅非課税枠を現行の500万円から時限的に次のように大幅拡充されます。
平成22年度は1500万円 平成23年度は1000万円 (ただし合計所得金額が2000万円超の場合、22年は500万円となります。)
相続税については、現行の法定相続分課税方式から、事業承継税制との関係から遺産取得課税方式に改められる検討が数年前から行われています。現在は変更に向けての細かい内容の詰めに入っているとされますが、今回22年度での改正は結局行われませんでした。相続税法については、23年度改正を目指すとされています。そうなると、課税方式の変更や税率、控除額など抜本的な大規模改正になることは必至ですので、今後も相続税の改正には注目が必要です。
以上、平成22年度の税制改正についてポイントをしぼりご説明いたしました。政権交代直後でもあり、今回の改正では大きな変革はまだなされておりません。しかし、政局の不透明さもありますが、税制については今後の動向にはまだまだ注意が必要となりそうです。 なお、税務に関してさらに詳しい内容をご相談の方は事務所までご連絡ください。